先日、イカを釣っていたら、イカ用のルアーにアコウが食いついてきました。
本来ならリリースするサイズだったのですが、口の奥までルアーを丸呑みにしていたので、外せず持ち帰ることにしました。
ルアーを除去するにはさばかねばならず、鮮魚として商品にすることはできません。
そこで、普段は行う血抜きをせずに氷水に入れたらどうなるだろうかと思い立ち、試してみました。
血抜きをせず、持ち帰り、保冷状態で1日。
さばいてみると、やはり血がかなり残っていて、血管部分にとどまっているのがわかります。
こちらは血抜きを行った後、3枚に下ろしたアコウの身。
【2017年07月8日 追記】
3枚おろしの身の部分だけ載せてもわかりにくいかと思ったので、血抜きなしの写真と同様、血抜きを行ったアコウの中骨付き写真を追加しました。
(今日さばく機会があったので)
血抜きありとなしを並べると一目瞭然。
やはり血抜きの有無はその魚の質を決める重要な処理の一つであることがわかります。
空輸を使うことで生産地-消費地の運送時間を短くし、鮮度高い魚を提供できる羽田市場をされている野本さんのFacebook投稿です。(使用許可を得ております)
写真左の氷絞めというのは、網をあげて漁獲された生きた状態の魚を、あらかじめ作っておいた海水氷の中に直接入れる方法です。
海水温とほぼ同じ体温の魚が海水氷に入れることで急速に冷やされ、鮮度の悪化を遅らせることができます。
獲れた魚を素早く冷やすというのは鮮度保持では基本の「き」になります。
では写真の右側、首折れ血抜きとはなんぞやと言いますと、氷締めする前に血抜きと呼ばれる一手間を加えることを言います。
魚の種類や地域によって血抜きの仕方は異なります。
他の地域ではアジやサバなど比較的小型の青魚では手で首を折って、血を抜くこともあるようですが、対馬ではほとんど首を折っての血抜きはしません。
血抜きの一般的なやり方は、エラ周辺に通っている血管に専用の器具で傷をつけて、
海水の中でしっかり放血します。
魚によって、また漁獲量が多いなどで処理時間がない場合などは、エラに傷をつけた後、そのまま氷水に入れ、放血と冷やし込みを同時に行うこともあります。
それでも血抜きの有無の差はしっかりあります。
注意すべきは、血抜きというのは氷締めとセットです。
血抜きだけして氷締めはしないということはありません。
先ほど書いたように、魚を速やかに冷やすということは鮮度保持の基本です。
最高の状態での出荷を100点とすれば、
氷締めの有無で70点ぐらいが決まり、血抜きをすることで20点の加点、(ここでは述べませんが)神経締めで10点加点という具合でしょうか。
氷締めをすることが大前提で、血抜きをすることで90点の魚を市場に出せるという感覚です。
「じゃあ、現場はちゃんと血抜きをして市場に魚を出せばいいじゃないか!」
ということになるのですが、それがなかなか簡単ではありません。
定置網などでは日によっては大量に魚が漁獲されます。
ちなみにこの日はこのコンテナ5杯以上アジが獲れました 笑
それらを10数名で3時間ほどで箱詰めせねばなりません。
一匹一匹血抜きをしていると、市場出荷の物流に間に合わないわけです。
また、より簡単な血抜き方法である首折れならできるという場合も少ないないのですが、対馬の魚の多くが送られる福岡の市場では「見ため」も評価基準。
首をおって血抜きをするよりは、血抜きなしの氷締めだけの方が値段がつきます。
(この点はそれぞれのマーケットで評価基準が異なるだけなので個人的には納得できます)
この辺りは先の野本さんの投稿に対する、久保さん(対馬の定置網漁師)のコメントからもわかります。(使用許可を得ています)
たくさん漁獲された時には、「血抜きまでして90点の魚を出荷しつつ、物流に乗せられないロスを出す」よりは、「氷締めのみの70点の魚をすべて出せた方が良い」というのがいまの現場感覚かと思います。
とはいえ、羽田市場のようなトレーサビリティがしっかりしていて、鮮度の高い魚を消費地で提供できるサービスがある今、現場も血抜きや神経抜き処理をした高付加価値の魚を少量でも良いので出し続けていくことが大切だと思います。
消費者が、
「お、血抜きの有無でこんなに品質に差があるのか!」
と現場の一手間に対して対価を払ってくれるようになれば、血抜きの有無は単価(漁師さんの手取り)としてしっかり反映されるはずです。
血抜きの有無で単価に大きな差が出れば、少量しか獲れなかった時の所得向上や、血抜き処理をできる範囲で漁獲しようという現場の心理も働いて、資源管理にもつながります。
この点では、僕たちが行っている「一本釣り+直販」は付加価値付けに適したやり方と思っています。
定置網のように大量に獲れることはないので、一匹一匹、しっかり血抜きや神経締めを行うことができます。(秋のサバ漁のような例外もあります)
また、直販でお客さんとダイレクトにつながることで、そのような処理をしたものであることを知ってもらうこともできます。
と、最後に宣伝めいたことをぶっ込んでしまいましたが、
現場で漁師が行ったひと手間を消費者の皆さんが食体験として感じ取ってもらうことができれば、時間はかかるかもしれないけれど、漁師の生活改善や資源管理にも通ずるものと思います。
本日も行ってまいります!!
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