2011年2月2日水曜日

ニホンウナギ天然卵初採集プレスリリース

今日づけのNature Communications誌に掲載され,今日報道解禁.
http://www.nature.com/ncomms/journal/v2/n2/full/ncomms1174.html

かなり大々的に報道されているようです.
http://mainichi.jp/select/science/news/20110202ddm041040066000c.html

昨日,今日と広報経由でいろんな問い合わせが....
デスクのある部屋のボスの電話子機もコンスタントにかかってくる.
んー,集中できん.

2009年の白鳳丸航海で採れたんやけど,論文化に時間がかかって,今日プレスリリース.

最初は俺のやっている内容もこの論文に入れる予定で話が進んでいたが,
この論文では純粋に卵と親魚発見のことを載せて,俺の結果は別論文で投稿しようということになった.
故に共著にはいらず....ちっ.

でも,論文をチェックしてみたところ俺が作ったFigが採用されていて,何となくうれしい.
水産庁の親ウナギ捕獲ネタもパックしたんね〜.

これだけ注目されるとは,やっぱり日本人はウナギが好きやな〜.

少し調べてみたけど海外ではあまりこのニュースは取り上げられていない.
これぐらいか.

でも学術的には今回の発見はどんな意味があるんやろうか?

産卵時期,場所に関する2仮説,新月仮説,海山仮説が証明されたことか?
確かに卵は新月の時期に海山周辺で採られたけれど,他の場所で生んでいないということにはならない.
複数年数値シミュレーションした結果,今回卵が採れたところは必ずしも輸送環境としては良くないということになった.
シミュレーションだけではなくて,卵が採れたすぐ直後に同じ場所に放ったブイもウナギの生息域には輸送されなかった.
ん〜.

マリアナ周辺のいろんな海山で産卵していて,今回はじめてそのうちの一つの産卵場を押さえられたという可能性もなくはない.
むしろ複数箇所産卵場があったほうが,海洋環境の変化に対するリスクを抑えて,子孫を安定して残せるはず.
同じタイミングで複数箇所で生んでいるかを検証するには複数の研究船をださないといけない訳で,それは厳しい...
ん〜.

個人的には卵が採集された後,すぐに行った各層曵きネットによる調査によって,
卵や孵化直後の仔魚の分布層がかなり詳しく分かったことが大きいと思う.
この好機に,より濾水量の多い普段使っているネット(ORIネット)で採集を続け,卵の採集数を伸ばそうという意見が多い中,
組み立て取り付けが面倒な採れるかも分からない各層曵きネットに切り替えた.

鉛直的には水温や塩分,流れが大きく変わるので,
仔魚の分布層が分かったことで経験する環境が詳細に分かり,養殖技術向上にも貢献するのかもしれない.
まあ,水温や塩分なんかはいろいろ変えて試行錯誤されているだろうから,貢献できない可能性のほうが高いか.

あとはアリストテレスの時代から続いたウナギの生活史の謎(の一部)を解き明かしたという区切りってことかな.
謎は謎であり続けた時間に比例して明らかになった時のインパクトも大きくなるからね.


毎日新聞では「その卵だけ虹色に光っていた」って塚本教授の話が載っていた.
ほんまかいな
って思うかもしらんけど,これは俺もそう思った.
ウナギ以外の卵は透明なんやけど,ウナギのそれは光のあて具合で表面が微妙に色づく感じがした.
あと他の卵よりも少し大きい.
この2点をたよりにソーティングしたおかげで俺は誰よりも多くウナギの卵を見つけることができた.

今年もウナギ航海あるけど,どんな観測をするんやろか.
個人的には空振り覚悟で,新月付近の一番大事な時期に今回卵が採れた場所と違うところでサンプリングしたい.
卵が採れたところよりも数百キロ北のアラカネやパスファインダー海山の少し西の海域か,
数百キロ南のマリアナ海溝付近が臭い.
あとは時期はいつでもいいのでミンダナオ海流域での調査をしたいが,EEZの問題もあるし無理か...

今日はこれがらみで解析は全くできず.
まあしゃーない.

かわりにtwitterで時間スケールの長い視点で議論ができたので良しとする.
ウナギの種分化のタイミングを調べないと...青山さんや井上さんがやってたはず.
種分化以降の物理環境の変動を考えたときに今の生活史スケジュールは十分に頑健なのか.
いろいろ考察できる.


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