僕は伊奈漁業協同組合という漁協に所属して漁業を行っています。
越高、伊奈、志多留、田ノ浜の4地区に住む漁師さん約30名程度が伊奈漁協の組合員です。
(組合員はもっといるかもしれませんが、アクティブなのは多分30人ぐらい)
漁業形態としては定置網漁が2グループある以外は個人で漁船を出しておのおの沿岸漁業を行うスタイルです。
伊奈漁協に水揚げされる魚の中で、8〜11月ごろ獲れるマサバは全国的に見てもポテンシャルが高いということで、平成20年に「いなサバ」という名前をつけ、鮮度保持処理やサイズ選別など付加価値付けを行って、ブランド化を図ってきました。
僕は昨年の4月から漁業を始めたばかりで、昨シーズンしか「いなサバ」を漁獲していません。
ですので、ブランドの立ち上げから現在に至るまでの経緯はあまり知りませんでした。
今回、伊奈漁協主催で市場の方、仲買さんを招いて意見交換会をするとのことで参加してきました。
シーズン中の記事はこちら。
ちゃらんぽらんな新米漁師のブログ: ついに念願のイナサバを出荷!「伊奈漁協の68番のサバは間違いない」と言われるその日を夢見て切磋琢磨デス。
代表挨拶の様子
「いなサバ」の定義ですが、現時点では以下のようになっています。
・伊奈漁協に水揚げされること
・一本釣りであること
・漁獲後、しっかりと水氷で冷やすこと
・魚体にキズが無いこと
・12入り/箱(1匹420グラム以上)より大きな個体であること
・1箱5~5.5kgになるようにサイズ選別されていること
魚の鮮度を落ちにくくする方法はいろいろありますが、何より大切なのは漁獲後、しっかりと魚体を冷やすことです。
そのため、「いなサバ」は、漁獲し、イケスで少し馴致したのち、海水に氷を混ぜた氷水に入れて数時間以上冷やします。
ただ、氷の量が多すぎると氷水の水温が冷たくなりすぎ、その影響で、冷やしたサバの目の透明感が失われ、白濁します。(「星が入る」と言います)
冷やしすぎて目が白濁したサバ
適切な温度で冷やしたサバ
目の透明感というのはサバに限らず多くの魚の鮮度を判断する一つの指標とされています。
なので、たとえ鮮度が高くても低温での冷やしこみで目が白濁すると鮮度が悪いような印象を仲買さんに与え、魚価に影響するのではないかと思っていました。
その点を漁師さんが仲買さんに質問していたのですが、仲買さんの返答は、
「お腹のハリで鮮度を判断しているので、目の濁りはあまり気にしていない。」
とのことでした!!
これは朗報です。
というのもしっかりとサバの魚体を冷やせ、かつ冷やしすぎて目が白濁しない温度になるよう氷の量を調整するのはなかなか難しく、昨シーズンは冷やしすぎで何度か目を濁らせてしまい、価値を落としてしまったと思い、結構ヘコみました。
特に夏場は海水温、釣り上げた時のサバの体温も高いのでたくさん氷が必要で、新米漁師にとっては温度調整がかなり難しかったです。
目の濁りはさほど魚価に影響しないのであれば、身の鮮度が悪くならないようにしっかりと氷を入れて冷やせます。
とはいえ、さらに氷を入れすぎると水温氷点下になり、身が凍って鮮度が著しく悪くなることに繋がりますし、目の濁りを出さずに冷やしこめるに越したことはないのでまだまだ勉強が必要です。
市場、仲買さんからのお願い事項は以下の3点でした。
・ゴマサバをしっかりと除外すること
・同一箱内で体サイズにバラツキがないようにする
・一箱あたり5kg以上を必ず守る
このあたりは箱詰めの時に注意深くすれば防げることです。
市場の方、仲買さん、仲買さんを通して聞いた飲食店さんの「いなサバ」の評価は、地道な努力によって上がってきていて、その評価は魚価の向上として反映されています。(意見交換会の資料に出ていました)
何年もかけて築いてきたこの評価を落とさないように、生産者一人一人が今後も努力していくことが大切だと感じました。
伊奈サバについてお尋ねして、伊奈サバの話題で思わずコメントしてしまいました。
返信削除伊奈サバにも定義がたくさんあるんですね。神経締めとかは定義に入ってないんですね。
漁業に携わっている方がこだわりをもって売られる商品素晴らしいと思います。
早く伊奈サバの取れるシーズンになって、刺身で食べたいです。
未来さん、コメントありがとうございます!
削除神経締めはできるに越したことはないのですが、福岡、九州の飲食店さんなら漁獲後2日以内に提供されるので神経締めの有無で肉質に大きな差がないと思います。そういう理由で仲買さんの評価も変わらないんだと思います。一方で、大阪や東京などの遠方の場合は神経締めの有無の差が出てくると思います。なので、直販で遠方に送る場合は神経締めを施した個体を送らせていただいています。
僕たちも早く漁獲して未来さんに食べていただきたいです!